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「Stranger」という物語。
もうすでに去年のコミックスですね。早いわぁ… そういや、この作品、ちらちらと頂く感想に「続きはないのですか」や「トトの過去は一体どんなのですか?」という質問が多かったです。うん、まあ…そうですよね。トトがどうして一人で生活しているとか、本編では言及していませんからね。 この「Stranger」という作品。私が好きな西部劇にインスパイアして描き始めたものとは、後書きにも書きましたが、西部劇…といってもいろいろな時代があるものなのです。そこらあたりはアメリカ建国の礎の歴史背景をちょっとでも知っている必要がありますかね…やっぱり( ´ ω ` ) 今回、この物語の舞台にしたのは、おそらく南北戦争が終わったあたり…そしてネイティブアメリカンという土着の人々が「居留地」と呼ばれる場所に追いやられた後の部分を書いています。 フランがいたところはなかなかの田舎なので、まだ開発の風は吹いてきていませんが、機関車はすでに導入されていますし、大きな町ではオートモービル(車的なね!)なんかが走っていたはずです。 この時代、開拓者は裕福さとはかけ離れた生活を強いられていたわけですが、おそらくはフランもその一端にいたと思われます。家が貧しく、困窮して悪の道に走った…とするのが妥当でしょうか。そこらはきっと皆さんの想像からかけ離れてはいないと思います。 さて、そしてトトですね。 上でも書いたとおり、このときすでにネイティブアメリカンと呼ばれる人々は、入ってきた異国の人々に住む土地や食料を脅かされ、「居留地」というところに追いやられていました。…乱暴に言えば生活圏を利害関係上「奪われてしまった」わけです。 大半のネイティブの人々は戦争で命を落としたのでしょう。残った人々も白人種の管轄下に置かれてしまったわけです。中には国は違えど、友好を築いた人々もいたかもしれませんが。 そんな中でトトは異質で。 居留地に行かず、一人荒野で生きていますが、つまり彼はネイティブの中でも変わった行動をとったことになります。一人でいる限り、地の利さえあれば、白人種と無駄な交戦することもありませんし、一人くらいの生活は脅かされないでしょう。 トトは住む場所を奪われたことを呪って一人虎視眈々と争いを求めているのではなく、ただ最後までネイティブとしての誇りを捨てられず、荒野で生き、死ぬことを覚悟した存在として描いています。 彼は「霊」だとか、謎めいたことも言っていますが…前身はシャーマンだったのかもしれませんね。だから余計に自然と自分を切り離せなかったのかもしれません。 まあ、何故それを作品内で描かなかったかというと。 ひとつは「差別的表現が避けられない」と危惧したこと。西部劇を見たことがある人はお解りと思いますが、まあ、ネイティブの人々に対する風当たりはすごいものがありますから。 それに、今回の話は恋愛ものですから、その時代背景を言及してしまうと一気にスペックがあがってしまうと考えたからでした。ページも限られていましたしね! 誰か特定の人種を攻撃したいわけでも、史実をがっつりと腹一杯もりこんだテーマでもなかったので、大胆カット! したわけです( ´ ω ` ) 西部劇って物語の形体自体、ヒロイックさやハードボイルドを強調するものであって、情勢なんかを明記する構成でないのは確かかと思いますし、私の作品の場合「謎」をあえて「謎」のままで保留することで、奥深さを感じて頂ければと思っています。 最後に「Stranger」という題名に関して。「よそ者」という意味があるこの単語。おおざっぱには、元盗賊であった身分を隠して保安官になったフランのことを指しているのですが、トトも白人種にとってはある意味「よそ者」なわけですし、トトからも白人種の人々は「よそ者」な訳で。ドクら「盗賊達」も町の人々からすれば同じ白人種であっても「よそ者」で。つまり、それだけ「よそ者」って言葉は曖昧なもんだよ…という意味でつけました。 「よそ者」と銘打つのは、見た目でも人種でもなく人間の保身的な感覚なのかもね…という私なりの命題な訳です。 私はこの物語の続きも考えていますが…それが世に出るかどうかは、後の楽しみにて頂きたいです。 作家のこんな裏っかわ事情とか、皆さんは読んでいて楽しいのか解りませんけども、これからもちらちら書いていけたらなと思います( ´ ω ` ) |
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